充実のワークショップ@仙台市博物館

Posted by scansendai on 2007 年 12 月 23 日 – 7:01 PM

仙台市博物館のワークショップ「くらべてみよう!今の光と昔の光」(館内に絵画作品を展示している画家の松尾藤代さんも参加。22日開催)を見学しました。一般から募集した親子を対象としたものですが、大学の博物館実習以上の内容をもったプログラムで、学芸員歴ん十年の筆者も得るものが多い企画でした。

昔の光と今の光、そして昔の物を展示する博物館の照明についての基礎的解説があった後、展示室に移って、照明の道具とワザを体験。
浮き彫りのある陶器をサイドやトップから照らして立体感や陰影の変化を見せたり、またファイバーライト装置を備えた多機能展示ケース内に土偶や縄文土器を置いて、子供たちに蛍光灯とスポットライトを実際に調光操作させたり、赤外線TVカメラを通した映像を見せたりと、博物館ならではのさまざまな実物教材が周到に準備された本格的な“学芸員実習”です。
照明によって展示物の印象が大きく変わると、参加者からは「オオーッ」という感嘆のどよめきがあがり、担当のH学芸員は嬉しげな表情。

そしてハイライトは(??? いや、反対に部屋は暗くなるのですが)、行燈の明かりによる古文書の読書と、屏風の鑑賞です。
真っ暗な展示室の中で実際に行燈に火が燈され、燈芯を3本にしてもせいぜい2~3ルクス程度の光で江戸時代の教科書の文字を読んでみました。現代人にはかなり辛い照明です。
暗さに目が慣れると、離れた位置に置かれた行燈の光で、屏風の図像はぼんやりと判るものの、色の識別は難しいかもしれません。
展示室において生火の行燈で美術資料を見たのは、長いこと学芸員をしている私も初めての体験です。「金地の屏風は蝋燭や行灯の光を反射して、独特の明るさをもつ」と聞いてきましたが、想像していた明るさと現実は大きく違いました。
(デジカメの感度をISO1600に上げても撮影不能で、残念ながらその様子を画像でお伝えすることはできません。)

学芸員に「昔も今も変わらない光は?」 
と聞かれて、真っ先に「月の光」と答えたこどもは、なかなかロマンチスト。
さすがに、土曜の午後に「月の光」は用意できないので、次に、屏風を窓辺に敷かれた畳の上に拡げて、太陽光の下で鑑賞しました。これも、博物館では、ありそうで無い展示ではないでしょうか。

最後は、館内に展示されている松尾藤代さんの作品について、作者本人が解説。通常は、自然光と柔らかな人工照明の下にある作品ですが、用意していた強烈なライトを浴びせると油絵の具の下の層の色が鮮やかに発色して表情を一変させました。朝、開館前に、床に差し込む明るい光の反射で別の色に見える時間帯があるとのことで、その謎解きをした照明実験でした。

同業として、今回のワークショップの準備のたいへんさがよくわかります。
仙台市博物館の学芸の皆様、ご苦労さまでした。(M.M.)

追記
画像の掲載ができなくなりました。写真は後日追加の予定です。